実弥君の初恋「実弥、遊園地に連れてってやる」
親父が珍しい事を言うから手のひらサイズくらいだった頃の俺はミニオンズの中に居ても違和感の無い勢いで喜んで馬鹿でかい手を掴み純粋な目を輝かせて歩いていたのに着いた先は新台入れ替え後のパチ屋だった。景品コーナー近くに置いてあるソファに腰かけ悟った。
クソ親父の言う事は信じるな。子守に飽きた親父が見た事も無いくらい真剣な顔で台を選んで居るのをぼーっと眺めながら舌打ちする。気を抜くと直ぐに親父に似た癖が出るから最近はよく母親に怒られるようになった。もう直ぐお兄ちゃんになるからだろう。見習うなら親父ではなく園長先生にするとしよう。
ふと視線を感じて周りを見る。何故か床に尻を着きソファに頬杖をして此方を見上げるくりっくりのまあるい青色とバチリと目が合った。正直滅茶苦茶ビビッて悲鳴が出そうになったけどお兄ちゃんになるんだからこの程度で音を上げる訳にはいかないと思い鳥肌だけで済ませた。やるじゃねぇか小さい俺。
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