泡沫に溶ける月あの日は満月にもかかわらず、綺麗な星達が濃紺を美しく飾っていた。
瞬く星を眺めながら夜の海岸を歩く。静かな波の音に耳を傾け、ゆったりと心を落ち着かせていた。
サクサクと砂を踏みながら歩き続けていると、その波の音にほんの少しだけ、月光が差し込むような麗しい旋律が滲んでいるのに気がついた。どこか寂しげで、今にも消えてしまいそうな、そんな音色。
導かれるようにその音の方へ向かうと、大きな岩の上で満月の光に神々しく照らされた影がゆらりと動く。俺のことには気づいていないようで、美しくも寂しげな旋律を紡ぎ続けていた。
そっと岩の麓に腰を下ろし、歌声を聞いていたらいつの間にか眠ってしまっていたようで、目を覚ました時には歌声は止んでいた。
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