冷たい頰(浴室へ) 痩せた頬に触れると、そこは思ったよりもずっと冷たかった。俺はそれを迎え入れるように包み込み、そうしてしばらくの間さすって、鼻をこすりつけてキスをする。すると彼はそれを喜んで何度も俺にひげの生えかけたそこを押し付けて、優しいキスをねだる。俺たちは玄関で、もしかしたら誰かが見ているかもしれないそこでそんな馬鹿なことをする。愛情を確かめるようなことをする。人前に出て、確かめるようなことをする。けれど確かめたところで、愛情は去ってはいかないのだろうか? 俺には分からない。ずっと逃げられた人々しか見ていなかったから、幸せなそれが想像出来ないのだ。でも、彼は丁寧に頬をこすりつける。そして俺はキスをする。その繰り返しが、俺たちのおかえりの挨拶だった。
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