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    PROGRESSヤの夏×バーテンダー男主。
    予感の3話。「キャロル」
    バーテンダーの大会で優勝した。
    と言っても創作部門で優勝しただけで、総合優勝は逃してしまったので、また来年挑戦したいところだ。初めて優勝を掴んだおかげで、あちこちのハイクラスホテルから出張の依頼が来て忙しくなった。
    オーナーがそれも経験だというので、片端から出かけては、パーティ会場に設置されたバーカウンターで腕を振るう日々だ。
    毎日忙しくしていて、あの男のことは忘れかけていた。
    その日も大きなパーティに呼ばれて、バーカウンターで忙しくカクテルを作っていた。絶えず人が眺めに来ては、作ってほしいカクテルを言うのでIngaにいるときより忙しい。
    メニューが絞ってあるとはいえ、目まぐるしく注文される忙しさは中々経験出来ないものだ。
    人の波が途切れた時に、その声はした。
    「キャロルを作ってもらえないかい?」
    聞き覚えのある低い艶のある声に、はっと顔を上げると、そこには……。
    名前を呼ぼうとして、知らないことに気づく。
    「夏油だよ。夏油傑。妙なところで会うね」
    そう言った男、夏油は、真っ黒なブランドスーツに身を包んでいた。身長があるせいで会場内で目立つ。綺麗な顔立ちにちらちらと視線を送るのは女ばか 3089

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    PROGRESSヤの夏×バーテンダー夢主。
    のまれる2話。「フォーリンエンジェル」
    「や、こんばんは」
    チンピラの事件から一週間後、来店したあの男がそう声をかけてきたのに、俺は目を見張ってから、微笑むと男に近づく。
    「いらっしゃいませ。また来ていただいたんですね」
    「そう約束したからね」
    約束のつもりはなかったが、律儀な性格らしい。
    あれから、チンピラたちは姿をあらわしていない。本当にこの人が何かしたんじゃないだろうな、と一瞬疑って、普通の人間にそんな真似が出来るわけないかと、思考を振り払った。
    「今日は混んでるようだね。君を独り占めするわけにはいかなさそうだ」
    「ご贔屓にしていただいて嬉しいです。カウンターへのご案内でよろしいでしょうか」
    「もちろん。今日は他のバーテンダーも居るんだね。でも差し支えなければ君にシェイカーを握ってほしいけど、良いかい?」
    「かしこまりました」
    前回のいっぱいで口留めになっているはずとはいえ、どうにも立場が弱い。承諾して俺は、珍しくバーテンダーとして入ってるオーナーの横を通り過ぎる。
    「気をつけろ」
    そう囁かれて足を止めた。
    「カタギじゃねえ」
    「え?」
    オーナーがそう判断するなら本当だろう。前回のいくつかの台詞の理由も納得できる。足を 3070

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    PROGRESSヤの夏×バーテンダー男主。途中からR18予定。
    1話「スクリュードライバー」
    そのバーは、歓楽街から少し離れた上流のクラブやレストランが並ぶ通りにある。
    会員制ではないが広告は一切出していない。ネット掲載もお断りしている。紹介と噂だけで成り立つ、ハイクラスのバーだ。
    「Bar Inga」と名付けられたそのバーが俺の生きる世界。
    父親が早くに他界し、途方に暮れていた母親に声をかけたのが今のオーナーだ。見返りもなく支援をしてくれたそのオーナーは、土地持ちの大金持ちであり、道楽でバーを経営しながら、気まぐれに助けてくれたのだった。
    俺は躊躇いのないお金の上手な使い方をするオーナーに憧れたし、きっと声をかけたのだから俺の父親になるものだと思っていた。母親はひいき目なしに美人だったし、こんな状況でも朗らかでいようと頑張っていた。
    だがオーナーは、本当に気まぐれだったらしく、母親に対してそんなそぶりを露ほども見せなかった。だから、今もオーナーのことは尊敬している。
    そんな大人になりたくて、色々なことを経験したくて悪い遊びも覚えたが、結局、素行不良程度で問題のない学生に戻り、俺は成人するとすぐにIngaでバイトを始めた。
    大学を卒業して、二年ほど他のバーで修行をした後、Ing 4231

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    PROGRESSついてて×じゅじゅ夢
    「魔核呪鏡に世界はねじれる」 導入
    完成した!!書きなぐりだからめっちゃ荒いけど褒められたい!!!!!!!!!!
    『L班より全メンバー。ターゲットはポイント2を抜け逃走中。時速50キロってとこッスねえ。予定通り追い込み完了ッス。なんで、オレらからは』
    『ヘマして俺に尻ぬぐいさせんじゃねぇ』
    『だ、そうッスよ!オーバー!』
     耳元でまだ聞き馴染まない声は頼もしい。
    『K班了解。ターゲットを補足した。ポイント3へ誘導する』
    『ジャミル!始めるぞ!』
    『インカムが入りっぱなしだ、カリム』
    『お、悪ぃ!』
     緊迫しているはずの空気の中で、自分たちのペースを崩さないそいつらは、信頼できる気がしていた。
    『誘導完了。K班は防衛線フォローのため離脱する。オーバー』
     冷静な声が告げるのを、すぐに別の声が引き継ぐ。
    『A班より全メンバー。ターゲットがポイント5に向かったのを確認』
     そこまで言って、最後まで俺らとポジションで揉めた相手がやれやれとため息をつく。
    『これは予測が外れましたね。ターゲットは僕たちが頂く予定でしたのに。では、あとは頼みますよ。

     イタドリさん?

     』


     インカムに集中していた顔を上げる。広大な学校の敷地内の一角、森の中に俺たちは居た。
     情報通り、呪霊の気配が凄い速さでこっちに突 6498

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    PROGRESS呉葉さんとの合同誌。「恋俉い」
    夏油と一瀬の話。
    夏の繁忙期が訪れるたびに、体重が落ちてしまうのを今まで誰かに話したことがない。夏油は今日も食欲がないことと、誰も見ていないことをいいことに適当にゼリー飲料で昼食を済ませようと立ち上がる。職員室に置いてある小さな冷蔵庫を開け、取り出したところで手首をつかまれてぎょっとした。
    「傑君」
     立っていたのは一瀬で、夏油は気配がなかったと思いながら嘆息して見せる。
    「先生って呼びなさい。一瀬」
    「傑君、もしかしてそれを昼食にするつもり?」
     夏油の注意も聞かず、真剣な表情で夏油を見据える一瀬に、いつもの微笑が浮かんでいないことに、見つからない方が良い相手に見つかったと夏油は察する。もともと彼は周囲をよく見ている人間だが、あまり口を出さない印象だったから意外だった。
    「違うよ。少し糖分を補給しようと思っただけ」
    「8月に入ってから体重どれくらい落ちてる?」
    「…………一瀬」
    「色って呼んで。傑君」
     生徒としてではなく、恋人として心配しているのだと遠回しに言う一瀬に、夏油は内心をうかがわせない笑みを浮かべる。
    「真似っ子かい?案外可愛い所もあるんだね」
     余裕の表情を見せながら、夏油は冷蔵庫を閉め 3033

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    PROGRESSついでに私のループもの五夏五読んでほしい。「それはつまり……」
     言葉を途切れさせた夏油が、五条から目を離して口元を覆うように隠す。その視線はどこか空に向けられ、困惑したような気配がにじみ出ていた。
     夕暮れの教室は窓から差し込むオレンジ色の光に照らされて、影とのコントラストが徐々に強くなっている。放課後の教室に残ってくれと頼んで、椅子に座ったままの夏油を、五条は隣の席の椅子に座って唖然と見返していた。夏油の反応の意味が分からず、戸惑っていると、夏油は躊躇いがちに視線を五条に戻す。
    「君が私を好き、と言う話かい?」
     は? と全てを台無しにするような反応を、五条は本能的に抑え込んだ。
     おかしい。そういう話ではなかったと思っていた。夏油のことはどっちかと言われれば好きだが、そんな告白を受けているみたいな顔をされるような意味じゃない。確かに自分は夏油が何より大事で信頼していて出来ればずっと一緒に居たい、ということを一生懸命言ったが、それでもそういう意味ではなかった。いや、多分言い方を失敗した。
     じっと自分を見つめる夏油の瞳が、五条の真意を問うものであることに、ここで失敗は出来ないと五条は思う。ここで断って信頼を下げるよりも、肯 2320

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    PROGRESS「最強の反呪術師は五条悟の宿敵である」
    男主。なんでも楽しめる人だけ。勘違いに見えるけどこいつは悪い男です。面白いって言って。
    初めて折られたあの経験が、今の胸の底で青く燃えている。





     五条悟という人間は、夏油にとってそれほど複雑な人間ではない。
     出会った当初こそ、その傲慢なふるまいも、幼稚な煽りや言動も腹を立てていたが、その育ってきた環境や、隠しきれない優しさめいたもの、つまり背景を知れば、嫌煙する必要はなかった。
     狭い世界にいたらしい五条の非常識な言動は感情に余裕があるときだけ指摘してやり、本気で我慢ならないことは殴り合いの喧嘩で対応することもある。人付き合いに関しては器用さを自覚している夏油と、そして適度というには若干ドライだが、放置することが出来る家入が五条の同期だったことは、彼にとって幸いだっただろう。
     基本的に健やかな人間だ。悪感情を持つこともなく、子供っぽく根に持たれることもあるが、禍根を残すことはない。
     さっきもそうだ。
     五条の強引で下手をすれば怪我するような術式任せの攻撃を指摘して、喧嘩になった。夏油の煽りで無下限呪術を解かせての殴り合いに持ち込んで、お互い遠慮のない拳と蹴りに唇の端を切り、頬を晴らしたところで、夜蛾に見つかり、説教を受けたところだった。
     見物していた家入 7710

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    PROGRESS「五条悟の唯一無二の悪敵の話」
    独自設定。なんでも楽しめる人向け。
    前に言ってた反呪術師の話。前半。
    五条悟という人間は、夏油にとってそれほど複雑な人間ではない。
    出会った当初こそ、その傲慢なふるまいも、幼稚な煽りや言動も腹を立てていたが、その育ってきた環境や、隠しきれない優しさめいたもの、つまり背景を知れば、嫌煙する必要はなかった。
    狭い世界にいたらしい五条の非常識な言動は感情に余裕があるときだけ指摘してやり、本気で我慢ならないことは殴り合いの喧嘩で対応することもある。人付き合いに関しては器用さを自覚している夏油と、そして適度というには若干ドライだが、放置することが出来る家入が五条の同期だったことは、彼にとって幸いだっただろう。
    基本的に健やかな人間だ。悪感情を持つこともなく、子供っぽく根に持たれることもあるが、禍根を残すことはない。
    さっきもそうだ。
    五条の強引で下手をすれば怪我するような術式任せの攻撃を指摘して、喧嘩になった。夏油の煽りで無下限呪術を解かせての殴り合いに持ち込んで、お互い遠慮のない拳と蹴りに唇の端を切り、頬を晴らしたところで、夜蛾に見つかり、説教を受けたところだった。
    見物していた家入に頼み込んでファストフード店での奢りと買い物の荷物持ち引き換えに治癒してもらい、 3988

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    DOODLE呉葉さんとの合同誌の話。
    倫理とかない。
    オリ主(17)×五条(28)
    なんでも楽しめる人だけ。
    「人に落ちる恋」
    「悟君」
     ずっと聞きたかった声がしたのに、五条はゆっくりと目を開けた。寝るときは目隠しは外しており、薄暗い部屋はまだ夜の気配が漂っていて静かだ。声の主を探して見上げた先で、誰かが自分を見下ろしているのを見上げる。警戒しないのは、それがもう誰かわかっているからだ。
    「……いつ帰ってきたの?」
    「ついさっきだよ。駄目だよ悟君。こんなところで寝たら風邪ひくから」
     言いながら、自分の背中と足の裏に手を差し入れられて五条はぎょっとした。身長は自分のほうが10センチ近く高いのに、気にした様子もなく軽々と五条を抱き上げた一瀬が、器用に呪力を扱っているのが分かる。五条は、この身長と年で、こんなシチュエーションにときめくなんて思いもしなかったと一瀬の首に抱き着きながら思う。危なげない一瀬がベッドにそっと五条をおろしたのに、五条は腕を離さずに一瀬を捕まえたまま自分に引き寄せる。五条の力に倒れこみそうになった一瀬が、両手をシーツについて五条にかぶさるようになったのに、五条は唇に笑みを浮かべた。
    「ね。色。悪いこと教えてあげようか」
    「駄目。悟君、疲れてるでしょ」
    「疲れててもしたいの」
     一瀬が青くてち 2973

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    DOODLEフォロワーが非術師の夏の兄のラスボスルートが見たいっていうので落書きした。長野を中心として半径400キロ四方から呪霊の出現報告がなくなったという話を聞いたのはつい三日前だった。
    夏油と五条はようやく突き止めた白鴉教団の本拠地に足を向けていた。二人とも交わす言葉ない。その地に誰が待っているかなんてわかりきっていたからだ。会えば殺すしかないと分かっている最愛の相手に会いに行く。
    死なず鴉の能力は、呪力を吸い溜め込むことだ。彼が底なしの器であったことが、悲劇の種だった。この世界から呪いをすべてを身に収めようとしているその「人」を、なぜ殺さないとならないのかというと、ひとえに彼が力を持ちすぎたからだ。もう出来ないことはないと言っても過言ではないほどの呪力をため込んでいるだろう。強大な力をもつことは認められないのだ。呪術師以外は。
    分かっている。分かってているが、納得できるものじゃない。この世界のために、いや、彼の理由がひとえに自分を、弟の自分を守ることであることを夏油は知っていた。だからこそ、夏油が任命されたのだ。彼の弱点として、彼を討つように、と。
    優しい人だ。大切な人に甘くて、自分が盾になれる強さを持っている人だ。どこで間違えたのだろう。思い返しても、夏油には分 1662

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    PROGRESS時間と世界を跳躍するトリッパーな女主と夏油の話。救済系。
    あの春の日、あの少女を死から救えたら、私の選択肢はまた変わってただろうか?
    前中後編のうちの前編。まとめた。
    雨の音がずっとしている。水があちこちにぶつかり、跳ねては地に落ちるて流れていく音が重なり合って響いている。今、世界のノイズはそれだけで、通り過ぎていく傘がいつもよりも人間の情報を減らしていた。今は何も見たくない。特に『普通の人間』を視界に入れたくなかった夏油にとって、この雨はほんの少しだけ救いだった。行く宛もない。そろそろ戻らなければ門限に間に合わないと分かっていても、どうしても足を元来た道の方へ向けられない。帰っても今は誰もいないのを知っている。出迎えてもらったところでなんになる。そう思う自分と、傘も差さずに馬鹿みたいに濡れて、どうするつもりだと自分が問いかけてくるのを聞こえないふりをした。夏油は俯いて毛先から雨が滴り落ちるのをそのままに、ただただ黙ってただ足を進める。止まることは出来ない。自分が決めた道を歩んでいる。でも行き先が分からない。救うこと。その対価に傷つくこと。見返りを求めているわけじゃない。でも、この世界はあまりにも──自分達に優しくない。
     ふと、前に人が立っていて足を止めた。
     避けようとした瞬間に、雨が止む。
     違う、頭の上に傘を差し出されたのだ。
     顔をあげると 7892

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    DONE花毒の呪術師2 後編虎杖の背が見えなくなるまで見送って、春永は、車のところに帰ろうと身を翻し、それから驚いて足を止める。気配なく行手に立っていた五条は、軽い調子で口を開いた。
    「どう?殺せそう?」
    あまりにも口にするには鋭い問いかけに、春永は言葉に詰まった。
    「…………性格が悪いですよ」
    「自覚済みだからなんとも思わないねえ。で?どう?」
    逃がさないと言うように問いかけられて、春永は視線を逸らす。
    「良い子ですね。真っ直ぐだ。知っていましたけど」
    「死という永遠の春を与える処刑人の末裔、春永藤太くんにその良い子は殺せる?」
    「毒は効かないんですよね。俺には荷が重いですよ。……でも、すごく……慕ってくれているから、ただ殺すことなら簡単だと思います」
    苦しそうにそう表現した春永も、少なからず虎杖に思い入れがある様子であるのに、五条は満足そうに頷く。
    「だろうね。ま、春永の家が僕側についてくれてるなら、暗殺の心配もないと思って藤太に戻ってくるように声かけたんだよね」
    「……信頼してますよ。五条先輩」
    「まっかせといてよ」
    任せて良いのか心配になる調子だったが、その点に対しては、春永は五条を誰よりも信頼していた。 2680

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    DONE「無下限の摂理」 完
    自分のエゴと愛に膝を折る最強の話。
    私が雪璃に会おうと思い立ったのは、非術師のことを考えていた時だ。答えの出ない思考に悩んでいる中で、彼と非術師が結びつかない自分の都合の良さに失笑しながら、連絡を取ると二つ返事で誘いに乗ってきた。
    カラオケにでも行く?と珍しい提案に乗って、雪璃の行きつけらしいカラオケで待ち合わせる。先に着いたので店先で待っていると、向かってくる雪璃をすぐに見つけた。
    「や。久しぶり」
    「……傑」
    久しぶりに会った雪璃は、私を見ると驚いた顔をして、それから慌てたように近寄ってきた。
    「具合悪い?」
    思いがけず問い詰めるような様子に驚く。
    「え?どうして?」
    「体重落ちたんじゃない?」
    そんなに会っているわけじゃないのに、よく気づいたな、と感心する。
    「そこで痩せた?って言い方しないところ、気遣いあるね。悟にも見習わせたいよ」
    クラスでも好かれてそう、と言った私に、茶化しに乗らずに雪璃は真剣な目で私を見ていた。
    「……ちょっと、任務がきつくてね」
    夏バテと誤魔化せれば良かったけど、その時期にはまだ早い。
    「分かった。中で話そうよ」
    そう誘って慣れた様子で手続きをして、雪璃は先を歩いて行く。その後をついていき 6018

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    PROGRESS「無下限の摂理」
    最終話 導入 全ての回収をはじめよう。
    『ねえ、雪璃くん』
    見知らぬ綺麗な着物の女の人だった。男の人もいたように思う。みんな俺を見ていた。急にいなくなった父と母をさがしてきょろきょろしていたところに、話しかけられて、みんなちょっと怖い雰囲気で、心細い気持ちで顔をあげていた。
    『悟様のこと、好き?』
    唐突な問いかけは、でも疑問には思わなかった。
    『うん。さとるくん、かっこいい』
    『友達だと思ってる?』
    『うん。ともだちだよ。今日もあそぶんだ』
    『友達を守りたい?』
    よく意味がわからなくて、目を瞬いてその顔を見ていたように思う。ゆっくり考えてから、俺はしっかり頷いた。
    『守りたい! だってさとるくんすごいもん!』
    笑った俺は頭を撫でられて、それから綺麗なグラスで水を貰った。やけに冷たくて美味しくて、体に染みていくようでびっくりしたのを覚えている。
    全部飲んじゃってね、と言われて飲みきったらまた頭を撫でられた。
    『悟様のこと、よろしくお願いしますね。雪璃くん』
    弧を描いた唇。
    飛び起きてから、ようやくそれが夢だと理解して大きく呼吸をした。
    一人暮らしの狭い部屋を見回して、俺は胸のあたりを押さえた。水を飲み込んで通っていたあの感覚が 4479

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    DONE死に戻りの二話ができたよ。じごく呪術高専と、俺が通う高校は離れた位置にある。なるべく呪術高専には近寄らないようにしているし、この東京で偶然にも遭遇することなんてないだろうと楽観して生活していたら、そんなことはなかった。
    「ね、君」
    スマホで目的の映画館への地図を見ながら歩いていた俺は、声をかけられて顔をあげてから目を瞬いた。
    行手に立ち塞がるように夏油傑が立っていた。
    「飴食べる?」
    指に挟んで見せるようにした夏油に俺は思わず笑ってしまう。
    「何それ悟用?」
    俺の言葉に夏油も笑い、そのままマックへ行くことになった。

    「夏油傑。呪術高専一年生」
    「佐神雪璃。……高校の名乗りを入れるやつは柄が悪いって聞いたことあるよ」
    「初対面で言うね」
    苦笑した夏油に、俺は慌てた。つい知っている気分で話してしまったが、確かに初対面だ。こんな初歩的なミス最近ではしていなかったが、と思ったけど、最近は悟に絡んでいなかったせいだと思い至る。
    「ごめん。不愉快だったかな。悟の知り合いだと思ってつい気が緩んじゃったんだ」
    「別に構わないよ。それくらいの方が私も話しやすい。でも、どうして私のことを知っているのかは聞かせてもらいたいな」
    そう切り 7268

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    PROGRESS「あの日々に僕らは最強だった」
    五が完成する前まで最強と言われた一瀬色とさしすの青春の日々の話。今はもう褪せるだけの、きらきらした記憶の記録。
    誤字修正。シーン追加。
    憧れていたことがあった。
    なんでも出来た。呪術師が望むことならおよそなんでも。一人で立てて、そして一人で勝てた。孤独を感じたことはなかった。元から一人で完成していたからだ。寂しくもなかった。それで使命を果たせていると知っていたからだ。でも、わがままでも夢を見ている。
    いつか、何かを恐れた時に、足を止めないで済むような。
    思い返した時に、笑ってしまうような、輝かしい思い出が、欲しい。


    階段を駆け上がり、デパートの広い屋上に到着した五条と夏油は、思わぬ光景に出くわし立ち止まった。見やった先、おぞましく黒黒とした球状の呪霊に対し、白いコートの男は裾を翻し、月明かりの下、軽やかにまるで踊るようだった。手にした大きな刃のある武器は薙刀のように見える。柄の長い武器を軽々と、遊ぶように回転させては斬り込む足の踏み込みすら、定められていた動きのようで美しい。月光に照らされて影になってはちらちらと見える横顔は整って、楽しそうな表情がなかったら人形のようだったろう。高専一年生で実戦に出るようになったばかりの五条と夏油にとって、決して余裕のある相手(呪霊)ではないことは、青年が相対している呪霊の呪力から 6303

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    DONE4話。本当の父(げとうすぐる)が迎えにきました。「優は感情を出すのが下手だよね」
     僕が律守を呼び出したのを見た悟にそんなことを言われてその顔を見上げる。僕の首が痛くなると思ってくれたのかしゃがんでくれた悟と目を合わせる僕に、悟は続ける。
    「呪力は負の感情を引き金にコントロールするものだ。律守を呼び出すのは、過去の経験でうまく出来てるけど、律守に呪力を回せてない」
     この前呪霊をうまく倒せなかったのは、そういうことなのかな、と思いながら尋ねる。
    「どうすればいいの?」
     悟は笑みを浮かべた。
    「遊園地、行かない?」


    「うわあああああ!!!」
     上から急に垂れ下がってきた長い髪の女に隣の悟にしがみつく。リュックがずどん、と重くなって僕は息をつめた。驚かされると分かっているのに、本気でびっくりしてしまう。やってきたおばけ屋敷は、クオリティが高いことで有名なんだよと悟が言ってたことを思い出す。
    「ほら、呪力出し過ぎ」
     笑っている声にいらっとしながら、なんとか落ち着こうと息を吐いても周囲の暗さと、おどろおどろしいBGMに悟から離れられない。しがみついたままの僕に、歩けないよ。と笑う悟に涙目になった顔をあげる。すると注意されたのでサング 6272

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    MEMOさしすたちと親友になる一瀬色の話。プロット。五条たちが一年生の10月から話は始まる。
    とある二級呪霊の任務に当たるために現場に急行していた五条と夏油は、そこで一人の同い年くらいの青年と出会う。白いコートをひとつも汚さず立っている青年に、すわ呪詛師かと警戒した二人は、その場で青年と乱闘になりかけるが、突然鳴ったスマホにより青年はあっさりとその場を立ち去ってしまう。
    使っていた武器から呪具使いかと分析しながらの翌日。
    警報が鳴った高専に、慌てて校庭へ出ると、堂々と歩いて入ってきている青年の姿があった。
    「昨日のつづきしない?二人がかりでいいよ。君たち最強なんでしょ?」
    その煽りに乗った五条に巻き込まれる形で夏油も参戦し、互いの実力を量るような戦闘となる。途中で叱りつけてきた夜蛾にすぐに戦闘をやめる一瀬。
    「一瀬お前どうしてここにいる」
    「最強がいるって聞いて遊びに来ちゃった。ダメだった?」
    「駄目というか……」
    ため息をつく夜蛾の言った名前に、五条は覚えがあった。
    およそ100年前の話になるが、御三家には七逢瀬(ななあわせ)一族という御三家に仕える呪術師の家系があり、一瀬はその中の筆頭の名字だ。100年前というのは、御三家は七逢瀬一 1500

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    PROGRESS猿と見下した相手に恋という意味で心をおられる夏の話。完成。
    「価値があるから殺さないだけ」
    「あのこ、呪われてるんです」
    「呪われてる?」
    新しい相談者の言葉に、真摯に耳を傾けるふりをする。他の信者の伝手を辿りやってきたこの相談者には、金銭と言う意味で価値が見えた。
    新たな利用価値の高い信者を増やすために、面倒でもリアクションは重要だ。相手にとって気持ちいい反応をしてやれば、話はトントンと進む。猿の話はどれもこれも誰かのためと知って結局自分の本心や見栄や保身のためであり、正直反吐が出るが、糧になる相手なら差し引き少しマイナス程度。それくらいの労力は、いずれの呪術師の世界のためなら割いても苦じゃない。
    今回相談に来た白瀬一族は日本でも有数の富豪の一族であり、上手くいけばそれなりの資金を引き出せるだろう。会社経営すら娯楽といっても構わないほどの富を築き、その才能ゆえに富を増やすことこそあれ、衰える気配は今のところ見えない。
    「嘘をつくんです。ありもしないことを、本当のように滔々と」
    相談にやってきたのは、他の信者の紹介を受けた白瀬当主の夫人だ。一人娘が居るとは聞いていた。写真を見せられたが、表情のない写り具合は人形のようだ。何を言い出すか怖くて表に出せないという夫人が言う。ありも 8333

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    DONE社畜だけど逆トリしてきた五条悟くらい養える話「は?」
    「あれ?」
     ひょい。とドアを開けて部屋に入ってきた長身の人影に硬直する。知らない人だ。知らないっていうか、不審な人だ。きょとん、とその人物を見てから、その人が呪術廻戦の五条悟のコスプレをしてるのがわかった。ぱっと見でコスプレしてるってわかるのすごいな頭の片隅で思う。室内の暗さでも丸いサングラスの向こうからちゃんとこちらが見えているらしく、あちらもきょとんとした気配で顔をこちらに向けている。
    「え? え?」
     理解できない状況に立ち上がってその不審な人から離れるように壁際まで後ずさる。そんな私の様子を見て、少し考えるようにした不審な人はドアノブを掴んだ。
    「……お邪魔しました〜」
     そんなことを言ってその不審な人はドアを閉める。ぱたぱたと廊下を歩く音がして、玄関のドアが開く音、そして閉まる音がした。
    「な、なに? なんだったの?」
     知らない人物が入ってきた状況に恐怖を覚えた方が危機管理としては正しいのだろうけど、あまりに悪意もなさそうに普通に入って出て行ったのに呆然とする。部屋を間違えたんだろうか。自室を見回しても痕跡も何もない。というか身長高かったなあ、なんて身をかがめて 8181

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    PROGRESS「どうやらげとうすぐるのむすこのようで」


    誰も何も出てこない。
    気がついた時、私は5歳の男の子だった。
     泣かず笑わず無口で、なんでも良くできて聞き分けの良い。まるでロボットのようだと母にずいぶん心配され、周囲が気味悪がるほどに甘やかされていた。母はそのことには気づいていたが、私に子供らしいわがままや理不尽な言動を期待しての態度だったようにも思う。母は、私が普通の子であることをそうして確かめたいようだった。それでも、女子大学生までの記憶がある私には、なかなか難しい期待で、欲しいものを聞かれるたびに、申し訳なく思うばかりだった。スマホやタブレット、パソコンなんて欲しがったらそれこそ5歳とは思えないようなことをしてしまうだろうし、私はただ精神年齢が高く、多少の人生経験記憶があるというだけで、天才などではなかったので、そんな風に思われたらその先が辛いとも考えていた。
     父親はいなかった。母は名前すら口にしない。でも知りたいとは思わなかった。父親の情報は今二人きりの私にはどうでも良く、むしろ母に一人で育てる苦労をかけるだなんて、ろくでなしだと思い知りたくもなかった。ただ、母の手作りのお守りが一つ渡された。
     もう少し大きくなったら父親を調べて養育費でも分捕 4021

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    PROGRESS夢の中でしか想い人に会えない☀️君の話
    中編 了
    「………………」
    「………………」
     カリムは腕を組んで立ち塞がっているジャミルに何と言ったものか、言葉を探していた。
     朝一で飛び起きたカリムは、クルーウェルのところへ行こうとばたばたと自分で支度を始めた。ターバンは持つだけ持ってすることを諦め、部屋を出ようとしたところでジャミルと鉢合わせた。カリムの様子を見て険しい顔をしたジャミルに事情を問い詰められて今に至る。
    「説明をしろ。カリム。なんでこんな時間に起きてるんだ? それにどこに行こうとしていた?」
    「クルーウェル先生のところに行こうと思って……」
    「クルーウェル先生? 追加の宿題でも言われたのか?」
    「……オレのやりたいこと、止めないなら話す」
     考えた末にカリムはそう口にした。
     ジャミルなら、カリムがルディを助けたいといえば、危険なことはやめろと言うに違いない。それが心配からくるものだとわかるが、それでもルディを助けたかった。
     ジャミルはカリムの返事にため息をつき、それから考えるようにする。
    「止めない約束は出来ない。俺はお前を危険に晒す訳にはいかないからな。お前だって、俺の立ち位置を危うくしたくないだろ?」
    「う……。ず 6944

    _aonof

    PROGRESS夢の中でしか想い人に会えない☀️くんの話
    序破急の破くらい。
    休み時間は移動教室が多く、目的の人物に会いに行くことが出来なかった。ジャミルに遭遇しちまうかな、と思いながら、授業が終わってすぐ2-Cの教室に行くと、教室を出たアズールの背を見つける。駆け寄ったカリムは、アズール、と声をかけた。
    「おや、カリムさん。どうされました?」
    「相談したいことがあるんだ」
     真剣な声で告げたカリムに、足を止めたアズールは目を瞬いて眼鏡をかけ直すような仕草をする。
    「それは、ジャミルさんには内緒の話ですか?」
    「え? どうしてだ?」
     思いがけない推測に聞き返すと、アズールは嘆息した。
    「すでにジャミルさんに相談しているのなら、僕のところには来ないか、もしくはジャミルさんと一緒に来る筈だからですよ。まあ良いでしょう。あまり時間は取れませんが、カリムさんの頼みなら時間を作ります」
    「サンキュー! でも忙しいのか? アズール」
     カリムの問いかけに、ええ、とアズールは歩き出しながら答えた。
    「今、欠員が出ていますので」
     そのまま歩いて行ってしまうアズールを追いかける。モストロ・ラウンジのVIPルームに通された。
    「おや、お客様にカリムさんがいらっしゃるのは珍しいで 5173