後の祭り 夜が明けた。もう寝る時間。
枕に頭を沈めた僕。その上に覆い被さる先輩。
いつもどおり。これからする。それは嬉しいこと。
両手で顔を包んで、引き寄せて、キスをした、僕に──
「っ、今更なんだが、この体勢、苦手なんだ」
先輩が、気まずそうに言った。
「体勢?」
首を傾げた僕はベッドに横たわり、先輩はその上。
これの、何が?
疑問は声にする前に解決した。
「一方的に組み敷いているようで、落ち着かない」
「ああそういうこと」
それを聞いて僕が最初に思ったのは、別に四肢を拘束されているわけでもなし、仮にされていてもそれなりの訓練を受けているし、その気になれば返せるから気にしなくていいよ、ということ。
だけど。
「まぁ、それは先輩の心理的なもんでしょうからね、僕が何を言っても解決しないでしょうけど」
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