袖返ししは──「探し物を、しているんだ」
先輩はそう言った。
何を? と、僕は聞いた。だけど先輩は首を横に振る。
「分からない」
と言いながら。
分からないんじゃ手伝いようがない。そう呆れたら、
「この気持ちの、名前は、何なのだろうか」
先輩は、ただ、僕を見ていた。
「お前に俺を、見て欲しい」
見ている、ずっと、僕はあなたが僕を知る前から、見続けている。
「お前に俺を、知って欲しい」
知っている、あなたは何も、隠さないから。
「お前のことを、知りたい」
僕も、何も隠していない。
「お前の、特別になりたい」
特別、だよ、あなたは、とっくに。
「俺はお前が、特別で、唯一で、離れたくない、離したくない」
おんなじだ、と、思った。
「なぁサギョウ」
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