幸せ、とは「魏先輩には、このこと話すなよ」
物陰に隠れるようにして、真っ白な衣を纏った若い弟子たちが頷き合う。
皆一様に額には抹額をつけ、同じ世家であることが知れた。
「誰に何を話すなって?」
不意に頭上から聞こえてきた声に、誰もが肩を竦めて声の出処を探った。
「魏先輩……」
「なんだなんだ。人をお化けか何かみたいに。で? 何を隠してるんだ?」
「こればかりは、お教えすることはできません!」
そう言うやいなや、弟子たちはすぐさま姿を消した。
走ってはならないという教えであるにも関わらず、逃げ足のなんと速いことだろう。
魏無羨は関心しながら、木の上に座り直した。
「俺には教えられないこと、か」
そう言われると知りたくなるのが人と言うものだろう。
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