「日常」が変わった日「ねえ、秘密の話なんだけど」
その台詞が聞こえたのは、私が体育館倉庫で蹲っている時のことだった。顔を上げて見れば、クラスでも人気者の彼女が、倉庫の一口の扉に立っている。
「……何の用?」
彼女は、所謂クラスのカースト上位に居る割に私をいじめてこない、珍しい存在だった。だから、私も特に気に掛けずそう返した。そうすれば、彼女はいつも教室でそうしているように「ははっ」と笑った。
「言うねえ」
「……別に」
ふいと彼女から目を逸らして、また自分の膝を抱えて蹲る。そんな私を見てか、彼女は思い出したように言った。
「そう、それでここに来た理由だけど」
蹲って、俯いたまま聞く。私の視界は、制服のスカートに隠された自分の膝でいっぱいだった。
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