「君がイェラグでの任務が終わったら暖かいところに行きたいって言ったんだろ」
「そりゃあ言いましたけどね」
暖かな日差しが恋しい、とリーが寒さに凍えていたのはほんの数日前のことだ。イェラグの雪山は外部からの侵入者を拒むように容赦なく、氷雪をはらんだ風によって彼らを出迎え――案内を買って出たイェラが何故が申し訳なさそうな顔をしていた――、リー達はひっきりなしに訪れるチェゲッタを相手取っていた。これが終わったら休暇を取らせてもらいますからね、とリーは任務中に湿度の高い視線をドクターに向けていたが、それを受けるドクターは実に涼しい顔だった。わかった、この任務が終わったらバカンスに行こう、と。それだけを胸に現地住民さえも凍りつく氷雪を耐え忍び、そうして連れてこられたのがこのドッソレスだ。
2020