"Shield 35℃ / 27℃"
手元の新聞に書かれたその文字だけで気が滅入る。
どうりで暑いはずだと、俺はまだ室内を冷やしきれていないエアコンにちらりと目をやった。
粗悪なものではないはずだが、何せ元々の気温が気温だ。かなりのハイパワーに設定しているが、快適な温度になるまでは多少の時間を要する。
──店休日なのだから、今日の業務は自宅で片付けてしまっても良かったかもしれない、と考える。
ひとりため息を吐きながら、ソファの背もたれに体重を預けた。
ほどなくして、勢いよく入口の扉が開く。
「はよーっす……うわっ、涼しっ!」
「騒々しい、早く閉めろ」
大声を上げたのはフィンだった。せっかく下がり始めた温度が元に戻ってしまってはたまったものではない。じろりと睨みつけると、肩をすくめて「へーへー」と適当な返事をしながら後ろ手で扉を閉める。
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