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    ななめ

    創作BL(@naname_336)と
    二次創作(@naname_line)。

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    DONE【小説】ケーキ、追加注文で【田端】
    『言葉紡ギテ縁ト成ス』bnalオンリーの展示作品です。
    2020年11月1日「想イ集イテ」bnalオンリーオンライン即売会にて、小説再録本『図書館の隙間』に書き下ろした小話のひとつです。他の書き下ろしはweb収録の予定はありません。
    ケーキ、追加注文で【田端】 軽井沢風の、とでも言えばいいのか、とにかく小洒落た喫茶店で、室生は目の前の堀と中野がケーキを食べる姿を眺めていた。堀のお気に入りの喫茶店。店自体は小さいが天井が高く開放感がある。格子組の窓からは夏蜜柑のような光が差し込んでくる。
     天然木の四角いテーブルの上には数本のベニバナが飾られている。綺麗なのだが二人を見るのには邪魔だなと、室生はガラスの花瓶をテーブルの端に寄せた。
    「どうしたんですか、犀さん」
    「いや……それよりシゲはそれだけで足りるのか?」
     中野が気づいて尋ねてくるのをなんだか気恥ずかしく思いつつ、室生は話を逸らした。
    「そうだよ、しげじ。足りないんじゃない?僕の一口あげるよ」
     堀が自分のケーキを一口分フォークに刺して、それを中野へ差し出す。「辰、いいよ」「いいから食べて」、そんな会話を微笑ましく眺めつつ、室生はメニューを手元に引き寄せる。今日は二人を労うのが目的だった。武者小路が夏の休暇を取って四人で旅行に出かけてしまったのと、同じ時期に徳冨も休暇を取ったため、その間だけ畑仕事を手伝ってもらったのだ。
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    DONE【小説】華麗なる錬金術【直木、内田、鈴木】
    『言葉紡ギテ縁ト成ス』bnalオンリーの展示作品です。
    2021年6月20日「想イ集イテ弐」bnalオンリーオンライン即売会て、8ページ折本ネットプリントとして、こちらの小説を頒布しました。
    華麗なる錬金術【直木、内田、鈴木】、猫の友人【内田、直木、鈴木】 華麗なる錬金術【直木、内田、鈴木】

     飛行機に乗りたいと言ったら、向かい側に座る内田が「おっ、いいねえ」と身を乗り出してきた。その表情はすでに何かを企んでいる顔だ。直木も知らずニヤリとして「乗りたいねえ」と繰り返す。乗りたいねえなどと言ったが別に深い考えがあったわけではない。ふと思いつきを口にしたまでだ。それでも、口に出したら本当に乗りたくなってきた。それで目的地はどこがいいかと尋ねると、内田は「九州もいいし北海道もいいね。いや、それとも……」などと真剣な顔で思案を巡らせている。
     日が傾いて、窓から差し込む光が内田の頬に当たる。珍しく食堂はがらんとしている。午後のお茶には遅く、夕飯にはまだ早い。もっともここに集まる文士が一般的な時間感覚を持っているはずもなく、起きた時間が朝だし食事をしたいと思った時が食事時だ。だから食堂を覗けばたいてい誰かしらいるのだが、昼寝のあと直木が顔を出した時には、内田がぽつねんと窓近くの席に座って片肘をついて外を眺めているだけだった。近づいて行って、何か外に面白いものでもあるのかと声をかけると、内田は「面白いものがあるかないかは問題ではない。俺が見たいからこうしているんだ」とすました顔で嘯いた。面白い奴だなと思う。それで向かい側に座って珈琲を飲んだ。内田は直木が来た時から気が抜けたような炭酸水を飲んでいて、今もグラスを片手に飛行機の魅力を語っている。直木がオマエ本当に飛行機好きだなと言ったら、「俺は飛行機には一家言あるよ」と威張ってみせた。
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    DONE季節への招待状【堀と川端】
    ワンライお題「招待状」で書いたものです。
    僕らはみな、新しい季節への招待状を受け取っているのだ。

    *

    中庭のベンチは読書に最適な場所だけれど、外で過ごすには最適な季節は過ぎようとしていた。僕は抗うように赤いマフラーを首に幾重にも巻きつけて、芥川さんから借りた本を膝の上で開いた。『辰っちゃんこも好きだと思うよ』そう言われて渡された本は図書館の一般開架から誰かが借りてきたもので、司書さんからは一度きちんと返却してから読みたい人が借り直すようにと言われていたものの、僕らは本を回し読みすることに慣れきっていた。
    読み終わったら芥川さんと語ろう。
    それを楽しみにしていたはずなのに、ページをめくる手は少しも進まず、僕の目は舞い落ちる木々の葉をぼんやりと眺めていた。あれは桜の葉だ、花びらよりも重く宙を切る。心は軽やかとは言いがたく、池に落ちた葉のように沈んでいった──

    「堀さん」
    ふいに声をかけられて僕は飛び上がった。
    「は、はい。……あ、川端さん」
    川端さんは少しの間、目の前に立ったまま静かに僕を見つめていたけれど、そっと隣に座り背筋を少し丸めるようにして正面を眺めた。まるで僕が見ていたものを確かめるように。
    川端さんは前を向いたま 845

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    MEMOワンライで書いたもの。
    試しに文章を投稿してみます。どんな風に表示されるのかな。
    地味な秋声を応援する会の地道な活動


    激しく扉を叩く音がした。徳田が驚いて振り返る。一体誰が、とその激しい音に戸惑いつつ、手にしていた万年筆を置いて立ち上がる。扉越しに「誰だい?」と尋ねると、「ぼくだよ!」「おいらだよ!」という叫び声が返ってきた。新美と草野の声だ。
    「君たち、ちゃんと名乗らないと分からないだろう。ぼくだよだけじゃあ……」
    小言を云いながら扉を開けると、徳田の目の前に何かが突きつけられた。近すぎてよく見えない。一歩退くと、その分ずいっとせまってくる。
    「ねえ、お願い。ごんを治して」
    「ぎゃわずもお願い」
    二人の訴えに、ようやくそれが〈ごん〉と〈ぎゃわず〉であることに気づいた。ぐいぐい押しつけられてはたまらない。「ちょっと待って」と二人を制してごんとぎゃわずを受け取った。
    「まあとにかく二人とも部屋に入ってよ」
    部屋に招き入れると、新美と草野はしょんぼりと徳田の後をついてくる。さっきの勢いが嘘のようだ。二人は座布団の上におとなしく収まった。徳田も二人の向かい側に腰を下ろす。さっき手渡されたごんとぎゃわずをじっくりと眺める。ごんは背中の方にかぎ裂きが、ぎゃわずは裾(裾、で 1667