electric bass electric bass
重いガラス扉を押し開けて、まだ薄暗い店内を見渡す。電気も点いていない薄暗い空間に唯一光が差し込む扉の前に立つと、店内に俺の影が黒々と落ちた。
静かに陳列された楽器たちは、まだ見ぬ持ち主を今か今かと待っているように見える。
さほど繁盛もしていないが、閑古鳥が鳴くほど寂れてもいない楽器店。そこは俺がひとりで切り盛りしている小さな城だ。
ぱち、ぱち、と店の奥にある照明のスイッチを順に入れていくと、並べられた楽器たちが順々に輝き出す。
ピカピカに磨かれたギター、メタリックなボディが映えるベース、店の奥にどっしりと鎮座するドラム、白と黒のコントラストが眩しい鍵盤、どの楽器も活躍する時を夢見ているようだった。
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