ゼムアイ「ゼムナス! 裏返った服をそのまま洗濯機に入れるなと、いつも言っているだろう!」
革張りのソファに腰を掛け、優雅にコーヒーをすする同居人に向かって、アイザは裏返しになっているTシャツを突き付けた。
「ふむ……それはすまなかった。以後気を付けよう」
ゼムナスは眼前に突き付けられたTシャツからアイザに視線を移し、晴れやかに笑った
この自由奔放な同居人がアイザの家へ転がり込んできたのは、一ヵ月ほど前のことだった。キーブレード墓場での戦いで消滅したはずの彼が突然自宅に押し掛けて来たかと思うと、アイザの手を取って「私には頼れる人間が君しかいない。住む家が見つかるまで、居候させて欲しいのだが」と頼み込んできた。一度は断ろうとしたのだが、寂しそうな顔で「そうか。無理を言って悪かったな」と肩を落とす姿を見ていられなくて、結局「……わかった。だが、勘違いするなよ。その辺で行き倒れられたら寝覚めが悪いだけだ。あなたのことを許したわけじゃないからな」としぶしぶ了承した。
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