監獄 広い敷地の中の、広い建物の中。
五方向に伸びた廊下がよく見渡せる。
なるほど、この建物の役割からすれば合理的な造りだな。と感心していると、一つ吹き込んだ風に体がブルりと震えた。
「さみぃのか?」
「少しな。」
さすが、北の大地東端。キャンパスバッグからこの季節、冷房が効きすぎた室内でしか使うことがない薄手のカーディガンを取り出して羽織る。
送り主でも白い半そでシャツにハーフパンツの男は、嬉しそうに口角をあげた。少し前であれば『何をニヤニヤと』などと口に出していただろうが、その後が面倒なことを学習した身だ。黙って歩き始める。
廊下に沿ってたくさんある扉は、鉄格子になっている。たまに、中にいるのは明るい橙色の衣服を纏った人形で、この建物に収監されていた囚人を再現している
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