どうしてこうなったのか。大倶利伽羅は今にも頭を抱えたくなる衝動に駆られる。
師と仰ぎ、一定の間隔を空けて後ろをついてくることも多々ある兄弟刀。それが今、べったりと背中に張り付いて、両の腕を腹に巻きつけて離れない。
ことの発端は日中に遡る。出陣から帰還した火車切が大倶利伽羅の姿を視界に捕えるや否や駆け寄ってきた。聞けば今回の出陣で通算百回目となる誉を奪取したとのことだ。
「そうか」と短く相槌を打つ大倶利伽羅に、火車切は「それで……あの」と歯切れが悪そうに己が指を忙しなく揉みながら続ける。
「その、まだ大倶利伽羅と並べるほどじゃないってわかってる」
「それが何だ」
「りゅ、龍……まだ、我慢するから。代わりに、他のところ触らせてほしい……」
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