記憶の最初は中三の夏。
近所の神社でやっていた、夏祭りでのことだった。
「あれ?」
スピーカーからざらざらとした雑音と共に流れる祭り囃子を聞きながら出店を冷やかして回っていると、ちょうど金魚すくいと書かれたテントをよぎった瞬間に、その視線の端で何かがきらっと光ったような気がして虎杖悠仁は足を止めた。
(なんか今あの金魚……金色だった?)
思わずまじまじと平たい水槽を覗き混んだが、先程の一匹がいくらか他と見目が違ってはいたものの、ひらひらと泳ぐ金魚たちはみな一様に赤い。恐らく見間違えだったのだろう。だから、本当ならただ通りすぎてしまえば良かったのだ。
けれどその日、気紛れに尾ひれの綺麗だった一匹の金魚を掬い上げて連れ帰たことが、続く不可思議な日々のはじまりだった。
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