種静メイド服①いくら暦を視線でなぞっても、外の天気はまだ春とは言えない肌寒さが続いている。春はどこに行ったのか。晴れは晴れでも風が冷たいので防寒着は必須であるし、寒さに震えて入店したコンビニでホット飲料を購入したくなる気持ちが湧き上がる指先の冷えからしても、どうやら今年の春は随分と眠りが深いらしい。
桜の蕾が緩み、青空に薄桃の雲が浮かぶのはいつのことか、大学での最後の集まりを終えて帰宅した大曲竜次は長めの入浴でしっかりと温まった後、欠伸を噛み殺してビールを飲んだ。
どんなものかと思っていた就職活動もどうにか無事に終え、こつこつ進めていた卒業論文も恙無く提出し、四年間過ごした大学を卒業したのは先日のことだ。自由気儘、というほどではなかったが、大学の図書館にある大量の蔵書を誰に気を使うでもなく二刀流で読み耽り、専攻学科と合わせて興味のある授業を受け、自分のやりたいことに挑戦した四年間は紛れもなく良い思い出だ。
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