伊藤彦作の話 僕が願うことは、唯一つ。
どうか、この夢が永遠に続きますように。
どうか、どうか…
伊藤彦作の話
「彦ちゃん、イエーイ!」
そのアイドルグループのオーディションの合格発表を聞くや否や、前田利家が隣に立っている伊藤彦作に向き合ってハイタッチをする。彦作も「利ちゃん、やったね!」と、ハイタッチに応じる。
前田様、だぞ。そのお方は。僕なんかがおいそれと口を利けるお方ではない。北陸方面軍の大将の一人、前田利家様なんだぞ。
彦作の脳裏にはそう呟くもう一人の自分がいる。
でも、彦作の体は、はしゃぎながら、その『利ちゃん』と談笑している。
これは、何だ?これは、一体何だ?
彦作は不思議な気持ちで、内側から外側の景色を眺めている。
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