きっとこの日は忘れない風が優しく吹き抜ける。新しい葉は緑を色濃くし心地よい風音を立てて揺れている。
「ピクニック日和ですね」
まだ小鳥が朝を告げたばかりのさわやかな朝。ウォークアウトからかえってきて、シャワーを浴び、キッチンで一息ついていたら静かな声が背中に投げかけられた。
ウィリアムは声の主を見てにっこりと笑う。そう、そうなのだ。今日は最高のピクニック日和だ。
「イソップ!起きてたのか」
「えぇ、冷えたベッドで寝れなくなりまして」
「ははっ、悪かったって。ダーリン?」
「あなた特製のモーニングティーを入れてくれるのなら許します」
クスクスと笑う恋人のなんて可愛いことか。ここまで心を許してくれるまでには相当な時間を要したが、その過ぎ去った時間さえウィリアムにとっては宝物のようなものだった。
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