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    MEMO【🌹🦈未満】 ※1章オバブロ後、🦈がすっごく優しい
    眠りネズミは目覚めない 薔薇の迷路にはリドルしか知らない場所がある。中央のいちばん広い通路に入り、リドルの歩幅でだいたい二十歩のところ。そこで右を向くと、大輪の薔薇に囲まれてひとつだけ永遠に咲くことのない蕾がある。その蕾にキスをして、囁くのだ。「おはよう眠りネズミ。蝙蝠にうたおう」そうすれば生垣が左右に裂け、訪問者を迎え入れてくれる。

     その日もリドルは蕾に口づけ、その場所に来ていた。酷い雨に晒されしとどに濡れるガーデンチェアに腰掛け、念のため自身にかけた認識阻害魔法のベールの揺らぎを見つめながら、降る雨よりも大きな涙粒で頬を濡らす。
     泣きたくなった理由はたくさんある。とくに最近、オーバーブロットした後からは、それまで抑止してきた悪意が露骨に突き刺さるようになり、リドルを追い詰めていた。今朝も机上に残して離席した数分のあいだにノートにインクがこぼされていてここ数日分の努力を汚されていたし、ついさっきは自室に紅茶を運ぼうとしていたところを足をかけられてマグカップをひとつだめにした。ああいうことをする人間たちは皆とても狡猾だ。複数人で行動を共にされると、被害を受けた動揺の中で実行犯を明確にするのは難しい。
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