◇オーキッド・エヴァンスの場合◇ 悪気がないことくらい分かっている。
褒め言葉だろうことも理解している。
アイスブレイクというか何というか。
話の取っ掛かりに過ぎないのだろう。
でも。
それでも僕は。
こと、僕に向けて発せられたその言葉を聞くと「君は我々と違う」と言われているようで、やっぱり何だか好きになれなかったんだ。
◇
登校前の生徒ががやがやとしている朝の談話室。
みんな何でこんな時間から元気なんだろう。
元来朝には弱いけれど、雨の予兆がある日は殊更眠い。
僕は顔面いっぱいの大あくびをした。
「おはよー、オーキッドちゃん!」
背後から声を掛けられた。3年生のケイト先輩だ。
もしも可視化出来るなら、キラキラエフェクトがかかっているような誰よりも明るくて眩ゆい声。
1332