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    time6v6flies

    @time6v6flies

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    time6v6flies

    MOURNING常連さんと金糸の君うちはイタチは天気予報を見るのを欠かさぬ男だった。この世に生を受け幾数年、物心ついた時から朝の始まりは天気予報からだった。彼は常に傘の準備に怠らぬ男だった。というのにも決して浅くはない理由があるのだがこの本編に関わることがないので割愛する。


    学生時代を経て社会人として幾ばくかの時が経ちなお、彼は天気予報を欠かさず見ては常に傘を鞄に忍ばせる男だった。そんなうちはイタチが生まれてはじめて傘を忘れた日、確かに天に太陽は燦々と登っていたが同時にまるでバケツをひっくり返したような大粒の雨がここ、尾道の地を絶え間なく濡らした。


    天気雨というには異様な光景である。これは盛大に狐の嫁入りがなされているに違いない。物心ついた頃から一時も傘を忘れたことがなかった彼だがたいして現状への落胆はなかった。そんなこともある。しかし彼の鞄に収まる愛用の半導体は雨を嫌う。とにかくこの銃撃戦のようなどしゃ降りから避難する。


    それが彼に課せられた最重要事項であった。ふとまわりを見渡せばちょうどそこに喫茶店がある。ご都合主義とはよくいったものだ。しかし見つけたからには入らない理由がない。イタチはそそくさとその喫 991