カビ臭いホテルの一室で備え付けの小さな冷蔵庫を開けてあまり好みではない銘柄のビールを二本取り出す。
「飲みますか?」
「あれ?宿泊にしましたっけ?」
下着一枚だけを身につけてベッドの端に腰かけた後輩は缶を受け取りながら聞いた。
薄暗く湿ったような空気の安ホテル。退廃的な雰囲気がとても彼に似合っていて瞬間見とれてしまう。
いつのまにこんな大人の男になったのだろうか。
「今から変更してもらいます。もう今日は疲れたでしょう。寝て帰りましょう。」
冷えた缶をコツンとぶつけ互いに今日を労った。
二人での任務終わりに食事に行くのが恒例となった頃、一度彼が悪酔いしてしまったところからこの関係は始まった。
本当はタクシーでもなんでも使えば帰れたのだが、青白い顔をした彼が心配だった。少しの疚しさもなかったといえば嘘になる。
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