灰色の男⑩まだ辛うじて動く身体を無理に動かしていた。愛おしい人が眠る地下の棺まで重い足を動かした。棺を開け、美しい肢体が目に入る。
「起きる時間だよ。クリオネ」
男は愛おしく、眠っている美しいモノに語りかける。男の穏やかな声。美しい銀色の髪を撫でる。
そのまま、ずるりと男の身体は崩れた。
青空が彼女を祝福した。世界が彼女を彩っている。
彼女は睡眠から目を覚ますように目を覚ます。
その瞳の瞬きは空を映していた。
白く美しい女が目を覚ます。
らんらんらん。綺麗な声が教会内に鳴り響く。
少女がスキップするかのように、その教会から軽やかな足どりで出て行った。
世界が彼女を祝福するように、クリオネは
穏やかな顔で空を、街を眺めた。
「まぁ、いいお天気」
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