変人だけど顔は綺麗な人だと思っていたから、唇が触れても嫌ではなかった。センパイがオレをどう思っていたかは知らないけど、満更でもないのは顔を見てすぐにわかった。
「司センパイ」
「なんだ」
その表情はずるい。どうせはじめてのキスだったくせに、見栄を張って余裕ぶって。赤くなった頬と潤んだ瞳が全部台無しにしていて、それが余計にそそる。
「もう一回、いいですか」
センパイの視線が泳ぐ。その気持ちは手にとるようにわかった。だってオレたちは恋人じゃない。まだ出会ったばかりで、お互いのことなんてほとんど何も知らなくて、好きかどうかもわからない。それでもオレの視線はセンパイの口元に釘付けで、心臓はどくどく音をたてていた。
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