LonelyButterfly先に眠ってしまった彼の解けた紺碧の髪を撫でていたアントニオは、手を離して微かな溜息をつく。
「…ルキノ」
呼びかけても起きることはない。疲れ切っているのだ。
それでも優しく抱きしめてくれている腕の温もりが辛くて仕方ない。
ここは絶海の孤島にある実験施設。
非道な人体実験や、人造生物を生み出したりしている…所謂違法な施設だ。
アントニオは、元は優秀なヴァイオリニストであったが借金のカタとしてここに売られてしまった。
日々受ける薬物実験や改造により、その体には縫い傷が出来、自在に動かせるようになった緋色の長髪には黒い茨が生え、人の形を失いつつあった。
いつまでこの日々が続くのかと絶望していた彼はある日、部屋を移されることに。
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