夜更けのふたり おじさんがおれの面倒を見てくれている間、ひとつの布団に二人で並んで眠っている時期があった。着替えの服は買いに行ったのに、どうにも布団まで気が回らなかったらしい。おじさんが使っているベッドは一人用だけど少し大きくて、二人で横になっても少し余裕があった。
おれたちは寝るときの姿勢が逆向きだから、向かい合うことはない。いつも互いに、背中を向けあって眠っていた。
ある夜、部屋の電気を消した後に背中側から声がした。
「おれのことを、嫌だと思ってたりしないか?」
「え?」
よく分からない質問だった。でも、寝返りを打って後ろを向くのはなんだか躊躇われて、結局、振り向くことはしなかった。
「どういうこと?」
「……妹を助けられなかったおれのことを、恨んだりするときはないか」
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