ふたりごはん秋夜22時半。
それほど大きくない通りのそれほど綺麗でもない、こじんまりとした中華料理屋の暖簾を二人の男がくぐる。
「いらっしゃいませ~。あら、こんばんは」
「ども」
「まだ時間大丈夫?」
「大丈夫よ。あと10分待ってお兄さんたちが来なかったら閉めようと思ってたとこだけど」
うふふ、と笑いながら女将さんは油で少しべたつくカウンター席を年季の入った布巾で拭き続ける。
仕事が早く終わった日は二人そろってこの店に来るのが日課になっていた。
同棲して早三年。引っ越してきた頃は今より忙しくなかったこともあり、二人でよく近所の飲食店を開拓していた。ちょっと小洒落たイタリアン、大人気ラーメン屋、少しお高めな焼肉屋などなど。色々と食べ歩いた末に落ち着いたのが、ここの中華料理屋だった。かなり年季の入った見た目で、隣の新しくできたラーメン屋と見比べると一瞬入るのを躊躇してしまう。しかし、逆に言えばそれでもこの地で長年店を構えることができるのというのは、それだけ美味いということであり、自分たちのようにこの店を気に入って足繁く通う客がいるということなのだろう。
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