夜海のバカンス銃声が聞こえた。
気付いた時には、俺は1人で銃を構えて荒れ果てた地に立っていた。周りを見なくても、硝煙の匂いや焦げ臭い匂いが立ち込めていてここが戦場だと言うことはすぐに解った。ただ、様子がおかしい。ここには誰も居ないという確信があった。
「誰か、誰か居ないのか!?」
叫んでも答えてくれる人は居なかった。敵の気配もしなければ、生きている人間の気配もない。戦場なら必ずする筈の、腐った様な血の匂いもしなかった。
「……エー…ル。」
僅かだけど後ろの方から声がした。
生きてるやつかもしれない、声のする方に振り返って、
「タバティエール!」
ハッと目を覚ますと、心配そうにこちらを覗き込んでいるマスターが居た。
辺りを見渡すとそこは戦場ではなく、士官学校の談話室で、俺とマスターの他にもシャルルくんやシャスポー、グラースも居て、3人ともこちらを見つめていた。短く息をはいて呆然としている俺を見かねて、シャスポーがため息をつきながら問いかけた。
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