夜を歩く
足に絡まる闇を蹴散らしながら
右足を前に出す
左足を前に出す
舞い上がる闇はまた闇に呑まれ
世界を取り巻き続ける
夜は俺に耳打ちする
眠ってしまえばいいと
歌うような声で
来るはずのない朝を語る
「太陽が君の目をそっと撫でて
明日が始まるのだ」
その偽りに笑って見せる
俺は知っている
眠りの先に朝が来ないことを
俺は夜を歩く幽霊
幽霊の眠りの先にあるのは
魂との別離
だからただ歩き続ける
爪先で闇を蹴り上げながら
俺がその色で満たされるまで
全ての光が溶けてしまうまで
この夜の中で
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