池田少年の懊悩「来年まで休館……だと……!」
少年の叫びは秋晴れの空へと吸い込まれた。
ー東京 丸の内ー
上背のある少年が一人立ち尽くしていた。
目的地であった博物館は生憎休館中であった。下調べの甘さに舌打ちする。
遠路はるばるやって来た東京で、こんな憂き目に合うとは。
池田包平は兵庫県に住む中学3年生だ。上背があり、声も大きいことから、友人たちは『大包平』と親しみを込めて呼ぶ。
事業家として成功を収めている偉大な父、おっとりした優しい母に育てられ、実直で正義感に満ちた性分に育った。
大包平の人生の転機は6歳の頃に遡る。年の離れた妹の誕生に家中大喜びのなか、生まれた妹の顔を見て、思わず口を突いて出たのは聞きなれない言葉だった。
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