牛の天女 とある夫婦が、結婚してから仕事をしないでずっとちちくりあっていた。新婚生活が楽しくて仕方がないのはわかるのだが、妻は[[rb: 機織 > はたお]]り機に埃を溜め、夫は牛舎に何日も足を踏み入れていない。
何頭もいる牛の中で、大きくて乳の出の良い牛がいた。こまめに絞ってくれる者も来ず、子牛も早くに引き離されてしまっていたので、張って熱を持ち痛む乳を抱えて不安そうに主人の寝屋を見つめるばかりだ。
やがて牛は病気になってしまった。自分の命が残り少ないと悟った時、牛は恨みを持つどころか、主人への純粋な思いだけを抱いていた。
私を大切にしてくれた、心優しいご主人様。私はもう、あなたの役に立てない。だからせめて、祈らせて欲しい。
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