たいだなはなしごく稀にご褒美のような瞬間がある。眠れない夜、つまらない昼下がりの授業中、はやく起きた朝。いつもくるくると表情の変わる彼が、静かに存在している時の顔。それを覗くことができた時、貴重なものをみたような気がして何故だか嬉しくなってしまうのだ。
そして今朝はいつものアイマスクが外れた状態の彼の寝顔を拝むことができた。
「ハナビくん?朝ですよ」
「んん…」
いつまでもみていたいが、時間は無常。一刻一刻と登校までのタイムリミットは迫っている。
「そろそろ起きないと遅刻しますよ」
つい、魔が差して、無防備に伸ばされた手に指を絡めてみる。自分とは違う体温がじわりと触れたところから広がってゆくのを感じる。
「ん……タイジュ?」
725