帰る場所彼と離れて約5年が経った
きっかけは私の「親孝行」
「親が元気なうちに親孝行くらいしておけよ」という彼の言葉にどこか重みを感じてしまい
あれよあれよという間に私の親孝行が始まった。
共に旅行に行き、お祖父様のお遊びにつきあい、食事をし、映画を見て、編み物をし...
いつのまにか5度目の冬に差し掛かっていた。
「そういえば若造は元気かな」
そう呟くと、私と運命を共にする我が愛しの使い魔は私のマントの裾を咥え、城とは逆方向に歩みを進める。
ぐっと冷え込んだ夜に白い息が溶けてゆく。
あいつが出て行って4年と9ヶ月が経った
最初は寂しく感じた感覚も慣れ、元の日常が帰ってきた。
だが、数年連れ添った相棒との習慣はいまだに抜けず、洗濯物の干し方や買い物中にふとあいつがよぎった。
3366