窓「兄さん、まだ終わらないの?」
「あぁ、あと少しで終わるから、君は待っていて。」
「後片付けくらい、僕がやるのに…」
「何度も言っただろう?ご飯は君が作ってくれたんだから、後片付けは私に任せてくれ。」
金曜日、21時。この後見る予定の映画のDVDをセットし音量を調整し終えた花城は、手持ち沙汰になると二人の使った食器や調理器具を洗う謝憐の横でその様子を眺めていた。
花城にとって唯一で、最愛の人は皿洗いをする姿でさえ美しい。いつまでも見ていられそうだ。
しかし、次第に意地悪をしたい気持ちが芽生えてきて、最後の一枚を洗う彼の体を後ろからそっと抱きしめる。ほんの少しだけ、そんな無機物を丁寧に洗うのではなく自分に構ってほしいという欲が湧いたのだ。
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