灰谷蘭は、スカートをはためかせて、楽園を作る機会を伺っていた。カビ臭くて、薄暗い部屋。ここが私の世界の全てで、これ以上もこれ以下もない。部屋の隅に、新聞をビニール紐で束ねて置き去りにしてある。キッチンは水が出なくて、当たり前に部屋の電気だって点かない。ギイギイ音を立てる埃だらけのベットに腰掛けて、読めもしない雑誌に目を通した。
綺麗な顔で、綺麗な服を着た女の人達がいろんな服を着ている。文字が沢山書かれていて、私はそれを読むことはできないけれど何が書いてあるのかは気になっている。今日は来てくれないのかな。特に何もやることが無くて何度も見ている雑誌を適当にパラパラと捲ったその時、静かな空間に土を踏んだ足音が聞こえて、思わず小走りで外に走った。
「わっ、危ねえじゃん」
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