『Dear,Darling』「ダーリン」
「……あ?」
冬弥が口にした四文字が歌詞を読み上げたものではなく、オレに向けられていると気がつくまで、少し時間がかかった。二人きりのオレの部屋に、変な沈黙が横たわる。
「ダーリン」
相変わらず同じ言葉を繰り返す冬弥の目は、しっかりとオレを捉えている。でも、そんな呼ばれ方なんかしたことがないから戸惑ってしまう。
「なんだよ」
ガラスのようなシルバーグレーに射抜かれて、とりあえず返事をしてみる。しかし、それだけでは足りなかったらしく、そのまま見つめ合う。いったい何だというのだろう。ダーリン?
「……ハニー?」
「!」
思いつきで言ってみたのが正解だったらしく、途端に目がキラリと輝きを増す。これがやりたかったのか……いや、ダーリンとハニーって。バカップルか。
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