泥酔 モンド場内でアカツキワイナリー主催のパーティーが開かれたのは、春の風が吹き始めた日の夜だった。
パーティーといってもささやかなもので、酒造業の者や商人、果ては酒の知識が豊富だと豪語するただの酒飲みなど、馴染みの顔ぶればかりだ。騎兵隊長の俺が警備につくほどのきな臭さはなかった。
とにかく、穏やかな日だ。
目の前に酒があるのに飲むことは許されず、大きな問題も起こりえない和やかな会場で、俺は彼が現れるのをずっと待っていた。
というより、この場にいる全員が待っているのだろう。
小規模なパーティーといえど、主催なのだからオーナーも顔を出すはずだ。商人たちは、その時に一言でも交わせたら……と期待していた。そしてその娘たちまで。商売の話をしに来たのか、縁談を持ち込んだのか分からない。気さくな雰囲気のパーティーというのもそれはそれで厄介だ。いち早く適当な理由を見つけてこの会場から抜け出したいと思っていた。それでも留まっているのには訳がある。
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