予感俺は人並みの五感しか持たないが、丹念にさわると、生きている身体はたくさんのことを教えてくれる。
赤みがかった柔らかい髪を撫でると、睫毛がふる、と震えた。腕の中の炭治郎が目を覚ます。顎をなぞればほのかに目を細めて微笑んだ。
「義勇さん、それ、好きですねえ…」
いつかよりずっとぬるい体温。
「…うん」
ゆっくりと打つ脈拍。
「好きだよ」
少し乾燥した肌。
「好きだから…」
ゆるやかな呼吸。
「ふふ」
長くなる睡眠時間。
「俺も、好きです」
少なくなる食事。
「義勇さんの手、気持ちいい…」
俺のささくれた指に、炭治郎が頬を寄せる。
触れれば触れるほど、わかってしまう。
近づいてくるそのときが。
炭治郎がぽつんとつぶやいた。
「誰にも迷惑をかけないで死ねたらいいって、思っていました」
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