ききみみ 「前からききたかったんだけどさ」
いつものBar Fで朝食のカレーを口に運びながら、樹果が話し出した。
「焔の耳飾りって、何かいわれのあるものなの?」
焔はきまり悪げに赤面していたが、水を一口飲んでから話し始めた。
「何もねーよ。まあ、ケンカが得意そうなニンゲンの格好らしいからな」
傷ついた焔の治療に携わっていたのを誰かから聞いたのか、大怪我をした後の焔は、樹果に対して、以前よりは無碍な対応をしなくなった。そういう所、乱暴そうだけど義理堅いのかもしれないな、と樹果は思った。
「初めて会ったころ、耳が俺とお揃いかなって、ちょっと思ったからさ、聞きたかっただけ」
「いや、似てねぇだろ」
焔が誰にともなく呟いた。
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