ベターハーフ夏の夜。湿った空気が流れる神社に俺と場地はいた。家に居たくないとごねた俺に、場地が付き合ってくれたからだと思う。どういう経緯で神社に居たのかはもうはっきりと思い出せない。ただ、夏に神社で告白を受けたことだけは覚えている。誰も、罪を犯していない。まだ、東卍も、特攻隊もない。ただの友達だった時。人生で一番楽しかった時。場地との関係を誰にも犯されていないとき。そんなときの記憶。
その日、昼間はずっと学校にいた。家に居たくない俺は、授業が終わっても帰宅せずに、図書室で最終下校時間まで粘っていた。クラブはなんだったか忘れた。入ってはいたと思う。ただ、運動を放課後にした覚えはないので、文化部系だったんだろう。ああ、そうだ。ピアノ。放課後に図書室と音楽室を行ったり来たりしていたな。だから、吹奏楽とかそんなんだ。図書室が開いてない日は、練習とかこつけて一心不乱にピアノを弾いていたな。そうして、グリーンスリーブスが五時に鳴る。学校に響き渡る陰鬱なその曲を聞きながら、俺は帰り支度を始めてトボトボと帰っていた。
1827