戦場と羊 休暇だからと自堕落な生活をすることにも飽きてしまった山姥切国広は、甚だ不本意なことに、近頃はもっぱら健康を志向した暮らしをしている。
朝の八時には勝手に目が覚めて起床し、おもむろに身を起こすと二回まばたきをする。込み上げるあくびを勢いのままに口から吐き出し、軽く身を捩ってこきりと骨を鳴らす。それから布団を出ると、きちんと三つ折りにして押入れに仕舞い、着替えを済ませて階段を降りる。これらが彼の日常である。ルーティンと言っても過言ではない。
一階に降りて床のフローリングを踏むと、晴れた日には顔を上げた先々で朝日がひどく眩しい。それもそのはず、カーテンがひとつも無いのだ。ここへ入った当初に買いそびれてそのままだった。そういう点では、未だに彼は非常にものぐさであると言える。ただ、玄関横の窓にだけは覆いがあった。なんとなくで始めたグリーンカーテンだ。外に置いたプランターから、日々、にょきりにょきりとヘチマが伸びて絡まって、今や立派なカーテンとなっている。
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