中 二国の決裂十
多少のイレギュラーはあったものの、東国のリツカ王子の成人と誕生を祝うガラは恙無く終わった。
学友同士募る話があると言い訳を並べて、お開きになった後に二人はバルコニーで夜風に当たっていた。
「助かったよ。ありがとうオベロン」
「やぁ、なに。大したことではないさ。僕も相手はいなかったからね」
役得だったさ、とウインクをするオベロンにいつもならそういうのは冗談でも言うなと睨んだリツカだったが、今日は笑って「私も可愛い子の手を最初に取れて良かったよ」と笑った。口調もどことなくいつもより柔らかだ。
「お酒を飲んでいたけど、大丈夫かい?」
「大丈夫、少しだけだし…しかし夜風が気持ちいね…」
「本当に大丈夫だろうね?」
風が吹ゆいて二人の髪を揺らした時、ゴゥン…と鈍い音が響き始めた。城のカンパニーレから響く鐘の音である。リツカはそれまで目を垂れさせていたが、その音が耳に入ると、たちまち眉根を寄せた。
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