きみのしあわせ side:Jinto今日もだめだった。
何回言っても、どんなに気持ちを伝えても。
『ちがうよ』
『おれじゃないよ』
もう緊張もしないし、
ふざけたまま言うけどさ、
全部本気なんだからな。
本当は分かってるよ、
はやと、おれのことすきでしょ。
だいすきでしょ。
……なんてね。
おれがそう思いたいだけだけど。
あーあ、ほんとにただ”大事なメンバー”としか思ってないのかも。
まあそれがいちばんなんだけどね。
おれの方がまちがってる。
そんなこと分かってるけどさあ。
もうずっといちばん近くにいて、
たくさんつらいことうれしいこと、
いっしょに経験して。
なんでも知ってるし、分かるもんな。
だからちょっとなあ、
大事になりすぎちゃったなあ。
こんなに大事になるなんて思わないじゃん。
ねえ、それは同じだよね。
勇斗はさ、
おれのために、
振るんだよな。
『おれじゃないよ』
って。
なにそれ。
もっと良い人がいるよ、
これからまだ色んな人に会うよ、
ちょっと近くにいるだけだよ、
って。
いいじゃん。
もう勇斗に出会って、
ずっといっしょにいて、
こんなにだいすきになったんだよ。
勇斗以上に大事なひとなんて、
みつからないよ。
これだけいっしょにいるんだからさ、
気の迷いなんかじゃないこと、
勇斗がいちばん分かるでしょ。
若気の至りなんて、
……うーん、
それはまあ、実際若いからなあ。
ちょっとあるかな。
いや無いわ!
……いや恥ずかし
本当はさ、
かわいい女の子と付き合ってさ、
お忍びデートとかしてさ、
そのうち結婚してさ、
こどもも欲しいよ。
親に孫の顔、見せてあげたいよ。
そういうことだろ?
勇斗がずっと
『ちがうよ』
って言うのはさ。
おれも分かるもん。
それがおれの、
きっと本当のしあわせだもんな。
でもさ、
正直になってもいいじゃん。
勇斗は、
勇斗自身は、
ほんとはどうしたいの?
なんでも知ってるし、分かるのに。
いちばん大事なことは分かんないや。
勇斗がしあわせなら、
それでもいいのかな。