それでも季節は巡る 世界は救われた。人々の脅威となる天使は退かれ、人間は永遠の安寧を手に入れたのだ。
だが、そんなものは意味がない。だって、俺が愛した人は死んでしまったから。寿命がきたのだ。生きていれば死は当たり前にくるもの……というのは、平常な人間の常識で、体に悪魔を宿す異常な俺たちは、人間の生命から逸脱した存在だ。同じなのは外見だけ。生き物のサイクルから逸れた悪魔執事たちは、そうやって取り残される。もちろん、俺も。
屋敷が所有する森の、さらに奥。誰も踏み入れないような場所に、主様の墓はある。喧噪に邪魔されず落ち着いて眠れるように、といった執事たちの配慮でここに作られた。……でも、それは余計に寂しさを募らせるだけだ。きっと、みんな認めたくないのだろう。主様がもう、この世にいないのだということを。
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