魔王の住処に忍び込んだ俺が見たのは、綺麗な男でした石畳が長く続く廊下には所々小さな灯が空中に浮いており、俺の動きに合わせて影が揺れた。
とにかく足音を立てずに、歩き続ける。
奇跡的に潜入できたものの、ここはまだ目標地点では無さそうだった。
標的はただ一人、魔族の頂点に立つ男。
今や世界は魔族どもに支配されつつあり、俺が身を置く修真界でさえ圧倒的力の前に圧されている状況だ。
奪われた土地では理性が微塵もない下級魔族が増殖し、何の力も待たない人間は恰好の餌食だった。
全ての元凶は、魔族の勢いをつけたある男が頂点になってからだ。
世のためにもどうにかして、俺はそいつを殺さねばならない。殺せずとも、何かしらの情報を持って帰らねばならない。
いつの間にか廊下を抜け出し、一つの部屋の前に立っていた。
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