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    雨野(あまの)

    @jj_amano

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    雨野(あまの)

    DONEひふ幻ドロライお題「逃避行」
    幻太郎と幻太郎に片思い中の一二三がとりとめのない話をする物語。甘くないです。暗めですがハッピーエンドだと思います。
    一二三が情けないので解釈違いが許せない方は自衛お願いします。
    また、実在する建物を参照にさせていただいていますが、細かい部分は異なるかと思います。あくまで創作内でのことであるとご了承いただければ幸いです。
    いつもリアクションありがとうございます!
    歌いながら回遊しよう「逃避行しませんか?」
     寝転がり雑誌を読む一二三にそう話しかけてきた人物はこの家の主である夢野幻太郎。いつの間にか書斎から出てきたらしい。音もなく現れる姿はさすがMCネームが〝Phantom〟なだけあるな、と妙なところで感心した。
     たっぷりと時間をかけた後で一二三は「……夢野センセ、締め切りは〜?」と問いかけた。小説家である彼のスケジュールなんて把握済みではあるが〝あえて〟質問してみる。
    「そうですねぇ、締め切りの変更の連絡もないのでこのままいけば明日の今頃、という感じですかね」
     飄々と述べられた言葉にため息ひとつ。ちらりと時計を見る。午後9時。明日の今頃、ということは夢野幻太郎に残された時間は24時間というわけだ。
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    雨野(あまの)

    DONEひふ幻ドロライ第二回お題『イルミネーション』に沿った話です。幻太郎に片想いしている一二三の話です。幻太郎←←一二三って感じです。
    いつも読んでくださる皆さま、ありがとうございます。励みになります。
    SNOW DANCE カシャカシャ。小気味良いシャッター音を響かせて息をはぁっと吐き出す。白い息が舞えば、辺りの空気がますます冷えるような錯覚に陥る。ぶるりと身震い一つ。夜道にぽつんと佇む明かりに吸い寄せられ、自販機のボタンを二回押した。缶の温もりを手に馴染ませたのちに飲んだコーヒーは格別の美味さだった。

     夢野幻太郎の助手……と言えば聞こえが良いが、雑用係をするようになって数ヶ月が経つ。敵対同士である俺と幻太郎がどういったわけか共に食事をする仲となり、どういったわけか俺は幻太郎に恋心を抱いていた。思い立ったら即行動というわけで何度か彼に想いを打ち明けているが、その度に「お断りします」と拒否され続けている。
     告白も三回を超えた辺りだろうか、辟易とした様子で「小生と交際したいのならば、好きにならせる努力をしてくださいよ」と吐き捨てられたのである。というわけでかぐや姫の心を射止めるべく奔走する帝のごとく、俺も夢野幻太郎に好かれようと雑用係を買って出た。
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    雨野(あまの)

    DONEひふ幻ドロライ第一回お題「初めての」に沿ったストーリーです。付き合いたてのひふ幻。幻太郎に名前で呼んで欲しい一二三の話です。不穏っぽいけど激甘です。パワフル少女漫画。
    ひふ幻ドロライという素敵な企画に参加できて嬉しいです。
    そして読んでくださる皆さん、いつもリアクションありがとうございます。何よりの活力です。
    one two three step by step「ねぇ〜良いじゃん」
    「何がですか?おやつはさっきあげたでしょ。ポチ」
    「誰がポチだっての!!」
    「おや、お犬様ではなかったですか?」
     ワンワン、と鳴き真似をしてから茶目っ気たっぷりに笑う人物はシブヤディビジョン代表Fling Posseのメンバー兼俺の恋人である夢野幻太郎だ。
     つい一ヶ月前に恋人になったばかりで俺たちはラブラブのアツアツである。と言いたいところだが、一つだけ不満を抱いていた。
    「ポチじゃなくて一二三でしょ?ほら、リピートアフターミー!ひ、ふ、み」
    「ジ、ゴ、ロ」
    「もお〜幻太郎〜!」
     幻太郎が恋人同士になっても未だに〝伊弉冉さん〟と呼んでくることだ。まだキスすらも交わしていない二人だから、恋人同士ということを実感するためにも名前で呼んで欲しいと頼んでいるのにこうやってのらりくらりとかわされてしまう。これでは友人同士となんら変わりがないではないか。
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    雨野(あまの)

    DONEセフレ関係のひふ幻。back numberさんの『エメラルド』という曲から連想し書きました。あの歌詞通りに当てはめただけなので不都合があれば削除するかもしれません。曲のまま甘くないです。

    ひふ幻webオンリーばらゆき2開催おめでとうございます!
    ひふ幻界隈がさらに盛り上がるよう願いながらわたしも書かせていただいてます。
    いつもリアクションありがとうございます。
    嘘つきの行く末 すぅと息を吸い込む。吐き出したタイミングでドアをノック。乾いた音の後に「はい」という声がして、しばらくするとドアが開き、端正な顔の持ち主が姿をあらわした。ホテル独特の匂いが広がるその部屋はエグゼクティブルームだ。一度スイートルームを取ったこともあるが、「落ち着かない」と眉を顰められたためランクを落とした。それでもスタンダードな部屋やラブホテルを選ばないのは彼に対する敬いの気持ちとお互いに名の知れたディビジョンラップバトルの代表者であるがゆえだ。

    「遅くなってすまないね。幻太郎くん」
    「構いませんよ。お仕事ですもの。どうぞ、早く中へ」
     そう促され、廊下を一瞬だけ確認すると早急に部屋へと足を踏み入れた。シティホテルのエグゼクティブクラスとはいえ何処に週刊誌の記者が潜んでいるか分からない。いざとなれば取材のためホテルに行っただけ、と言えば良いのだが〝火のないところに煙は立たない〟理論で面白おかしく騒ぎ立てられるのも不愉快だ。記者というものはそういう奴らなのだ。
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    雨野(あまの)

    DONE付き合ってないひふ幻。匂うはずがない一二三の匂いがしちゃう幻太郎の話。
    不治の病 それは朝食に、とたまごサンドに齧り付いたときだった。ああ、まただ。小さく舌打ちをして、とりあえず口の中のものを咀嚼する。何てことないただのたまごサンド。マヨネーズの風味が効いたたまごサラダをふわふわのパンで挟んだ素朴なものだ。近所のコンビニで買ってきたそれは人気の品物だ、とテレビのバラエティー番組でも紹介されていた。自身だって〝本来なら〟美味しくいただけたであろうそのサンドイッチを見つめ、ため息を吐く。
     夢野幻太郎は一週間前よりとある症状に悩まされていた。それは今のようにふとした瞬間にやってくるのだ。
     忌まわしいあいつの匂い。嗅いだだけで不夜城が脳裏によぎる華やかで艶やかな匂い。あいつ──伊弉冉一二三の匂いが自身に纏わりつくかのように香るのだ。もちろんあいつはこの場にいないのに。こうなってしまっては食欲も失せてしまう。一口だけ齧ったたまごサンドをラップに包み、冷蔵庫へと運ぶ。夜になれば食欲もわいてくるはず、あるいは〝野良猫〟にあげてしまっても良いな、とも思った。不幸中の幸いなのは外食中じゃなかったことだろう。さすがに飲食店に赴き、一口だけ食べて残してしまうのは心苦しい。
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    雨野(あまの)

    DONEhttps://shindanmaker.com/804548様からお題いただいて書いたひふ幻です。
    お題→ ひふ幻のお話は
    「人は本当に悲しいとき、涙が出ないのだと知った」で始まり「ふと思い付いて、ごく自然に筆を執った」で終わります。
    貴方に生かされる 人は本当に悲しいとき、涙が出ないのだと知った。
     彼がこの家から出て行って三日が経つ。だが、俺は未だに泣けずにいた。別に強がる必要もない。この家には俺一人なのだから思う存分泣いたら良いのだ。それなのに涙は一滴も出なかった。
     巷で〝泣ける〟と話題の映画を観ても涙は出なかった。それならば、と読む度に涙を流す歴史小説を試してみるがそれもまったくというほど涙が出なかった。
     自分はおかしくなってしまったのだろうか。彼が俺の体の一部や機能さえも一緒に連れて行ってしまったのだろうか。もし、そうだとしたらいっそ体も心も魂でさえも全て奪い去ってくれて良かったのに。

     もう初夏へと向かっているはずなのに自分の手は氷のように冷たく不快感を抱く。少しでも温めようと両手を擦り合わせるがあまり意味はなさそうだ。昼間なのに雨のせいかどんよりと暗い雰囲気が漂う。しとしとと鳴る雨音を聞きながら暫し目を閉じ彼のことを考えた。太陽みたいに明るい人なのに、どうしてこんな天気の日に思い浮かべてしまうのだろう。いや、雨だろうと晴れだろうと関係ない。ところ構わず彼のことを考えているじゃないか、と自分に物申す。
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    雨野(あまの)

    MOURNING付き合ってないひふ幻。酔っ払い幻太郎が見たくて書いた。んー力不足。供養。シチュエーション被りとかもあるかもしれない。受が心を通じ合わせるのに戸惑う様子や一回拒否するシチュエーションが好きなのかも。この小説から他の小説にも引用するかも。
    ビジネスの話「おやおや、おばんです〜いらしてたんですね〜」
     この家の家主は引き戸を開けて中に入るといつもより間延びした声を出した。赤ら顔。とろんとした目。おまけに体から発せられるアルコール臭。てか、俺の家じゃないのに何故、俺が出迎えているんだ。深くため息を吐き出しながら「『いらしてたんですね〜』じゃなくてさ〜話聞かせてくれって呼んだの夢野センセじゃん」と彼を咎めた。
     俺と夢野幻太郎のこの妙な交流は三ヶ月前から始まった。新作の参考にしたいからホスト業のことを聞かせてくれ、と一二三と独歩の住むマンションに訪れたときは本当に驚いた。何しろ一二三は以前、幻太郎の服装のことに口を出し、逆鱗に触れてしまっていたからだ。激昂した相手に縋るほど困っているのか幻太郎は「以前のことは水に流すので協力してもらえませんか」と頭を下げてきたのだ。一二三はその依頼を快く引き受け、それから度々、夢野邸に呼び出されては仕事内容だったり、客とのやり取りだったりを彼に教えている。そして今日も例に漏れずに呼び出された……は良いが家に入って早々、「ちょっと野暮用がありまして……少しの間待ってていただけませんか?」と言って彼は出かけてしまったのだ。まあ今日は仕事も休みだし、何の予定もないし、少しの間なら……と思ったのが間違いだった。彼は一時間待っても二時間待っても帰って来なかった。その間も着信を入れたりメッセージを送ったりするものの一二三のスマートフォンは律儀に沈黙していた。
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