深淵 ここ数ヶ月、だんごちゃんの様子がおかしいことには薄々気が付いていた。だんごちゃんはいつも暗くて変だけど、そういう感じじゃない。
何かが欲しいけど手に入らなくて、それをすごーく我慢しているような、そんな様子。
「だんごちゃーん、この部分ちょっとセリフ変えたいんだけどどう思う?」
「………」
「あれ、だんごちゃん?だんごちゃーん!!おーーーーい!!!!ねえ聞いてる!?ねえねえだんごちゃんだんごちゃんだんごちゃん!!」
「わっ……、え、何、うるさいよシャケちゃん……。どうしたの?」
その日は小さなイベントでネタを披露することになっていて、滞りなく午前中のリハーサルが終わったところだった。楽屋でお弁当を食べた後、机に向かうだんごちゃんを尻目に一人でネタの練習をしていた。
855