where you go, I go ――それが、こいつにとっては盲点なんだろう。
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包帯はともかく、傷口に薬を塗り込むのなんか染みただろうに、ゲンは目を覚まさなかった。厚みのない胸がゆっくりと上下する様子からして、すっかり寝入ってしまっているらしい。うなされてはいないようだから、痛みというよりは体力気力的な問題なのか。案外タフで、何よりかっこつけなこいつも人の背中で寝落ちることがあるとは。
ゲンの身に何が起きたのか。
情報源は、「迷った」と、あちこちの傷、足の捻挫。まあなんとなく察しはつく。でも、起きたらこいつの口から吐かせようと思った。
ゲンは自分の話をするのが下手だ――というと、不正確かもしれないが、なんというか、そういう部分がある。例えば「司とはテレビの特番で会った」と、たったそんだけのことを聞くにしても、意外なほど時間がかかったというか、思い返せば随分後になってからのことだった。
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