放送事故みたいな現場に居合わせちまったんだよ。見慣れた顔を突き合わせた早めの忘年会の席で、数ヶ月前を振り返った諏訪洸太郎はそう語る。当時は兎に角必死で、通りがかりの嵐山と柿崎に放心中の生駒を任せて諸悪の根源と思わしき水上を急ぎ自隊の作戦室に引き摺り込んだ。それで手一杯だったのだが、よく行動したものだと自分を褒めることにしている。
「俺のことなんか好きになろうがなるまいがどうでもええんです」
同じく放心しているかと思いきや事情を尋ねてみれば自棄になっているらしいとわかった。もとより作戦室に来る途中だった後輩も一緒になって水上を捕まえたため椅子に着席している。なぜか三人しかいない室内で、最も部屋を使い慣れているはずの諏訪だけが立ったまま無駄に文庫本を整理していた。落ち着かないのだ。言葉を選んでいる間に、学力も情報処理能力もついでに顔面偏差値まで高い後輩が会話を進める。
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